SIGLENT SDS2104X Plus 導入(SDS2000X+)とレビュー

投稿者: | 2020/09/13

これまで、自宅での電子工作は基本テスター一本でやってきました。先日興味半分にADALM2000を購入し、PCソフトのSCOPYと組み合わせて使っていましたが、SCOPYが今ひとつ安定性に欠け、また、オシロスコープの周波数帯域も10MHzとちょっと狭くてあまり使っていませんでした。もっとも、ADALM2000を使うにはPCと接続する必要があり結構面倒くさいというのもありましたが…

今回10MHzのGPSDOを作り始めて、テスターだけでは10MHz出力のレベルも見れないし…ということでオシロを購入することにしました。最近、低価格帯のオシロが充実してきていて、10万円程度でもなかなか良さそうなオシロが登場しています。
新型コロナウィルスは嫌だけど、給付金10万円も配布されたのでそれと合わせて予算を少しアップして良さそうなオシロを購入することにしました。低価格オシロといえばRIGOLの評判が良いですね。10〜20万程度であれば計測器メーカー製のエントリーオシロも購入可能です。安心を買うのであればKeysight, Tektronixを選ぶことも出来できます。RF計測器で有名なR&Sもありますね。でも、この価格帯のオシロをKeysightやTektronixが自社で作っているとも思えません。FPGAやASIC、そしてF/Wの一部は供給していると思いますが、YouTubeのTeardown動画でも中国製の聞いたことないメーカのケミコンを使っていましたからね。

趣味で使うものですから、コストパフォーマンスを優先させることにしました。
10万円台ではRIGOL MSO5000シリーズのユーザーが多そうです。確かに高機能・高性能です。
対抗機は2020年に発表されたSIGLENT SDS2000X plusシリーズです。

RIGOLのモデルは70MHzからあります、そして2chモデルでもH/Wは4ch対応になっていてオプションライセンスを購入すると4chにアップグレードできます。帯域もオプションで拡張することができます。最近の計測器はこのような形態が多いですね。もう一方のSIGLENT SDS2000X Plusは2chと4chモデルではH/Wが異なりますが、S /Wオプションライセンスを購入することで周波数帯域や機能を後から追加することが可能です。

私が今回オシロを選んだ基準は

  1. 入力は4ch
    2ch入力であれば100MHz帯域でも5万円台からあります。でも、実際に測定し始めると4chでも足りないと思うくらいですから、2chでは絶対に足りなくなります。私は4chは必要最小限だと思います。
  2. 周波数帯域は100MHz以上
    周波数帯域は扱う信号にもよりますが、私の用途なら100MHzぐらいで間に合いそうです。基板上の100MHzを超えた小信号を正しく扱おうとすれば、プローブもきちんとしたものを使わないといけません。付属のプローブでは信号が出ていることを確認できる程度と思った方が良いでしょう。場合によってはプローブで触ると正常に動作しなくなることもあるでしょう。まぁ、RFの局発を調べるのであれば200MHz程度は欲しくなりますが。
  3. サンプリングは1GSa/s以上
    デジタルオシロで重要なのはサンプリング周波数です。理論上サンプリング周波数の半分の正弦波までしか見れません。「見れません」と書いたのは測定できないという事です。最低でも必要周波数帯域の5倍程度は欲しいものです。
    100MHzに対して1GHzサンプリング以上であればまぁ大丈夫でしょう。
  4. 入力インピーダンス50Ωがある
    入力BNCにT分岐などをつけて50Ω終端しても良いのですが、インピーダンス整合を考えるとあまり好ましくないですね。
  5. メモリーが多い
    デジタルオシロはどれだけ波形を取り込めるかも重要です。

候補に残ったのはRIGOL MSO5104とSIGLENT SDS2104X Plusです。Amazonで見るとMSO5104の方が少し高いようですね。SDS2014Xの対抗はMSO5074でしょうか。
MSO5000シリーズは日本でもユーザーが多いようで、満足度も高いようです。コストパフォーマンスは最高という評価ですね。サンプリング周波数も8Gs/s(1ch時)と優れています。
ただ、色々と調べていると、動作が少し重い、フロントエンドのノイズが大きい、入力インピーダンスが1MΩのみ、バグが多いと少しネガティブな点も見つかりました。RIGOLは日本法人があり、故障時のサポートなども問題なさそうな点は安心なのですが。

SIGLENTは、海外では評判も良さそうですし、RIGOLに比べてフロントエンドノイズも少ないようです。そのほかの点も私の要求を満足しています。気になるのは日本法人がなく、代理店もどうなっているのかよく分からないという点です。EEVBlogのフォーラム やYouTubeのRIGOLとの比較やTeardown情報を参考にしました。EEVBlogのフォーラム ではRIGOL MSO5104から乗り換えた人もいて、満足度も高そうだったのもあり、気持ちはSIGLENT SDS2104Xに傾きました。

しばらく悩んでいましたが、Amazonで取り扱いが始まり本体の3年保証も付いているという事でちょと割高でしたがSIGLENT SDS2104X Plusの購入を決めました。一時期、他の販売者が割安で販売していたのですが、売り切れてから再販売が今の所無いようで残念です。(校正されて出荷されるので不良品に当たるリスクも低いように思うので、安い方が良い?)
Amazonでの納期は1〜2ヶ月となっていましたが、注文から1ヶ月ぐらいで届きました。

SDS2104X Plusのレビューです。

  1. 思ったより小ぶり
    Amazonの大型箱で届いた時は思わず「デカ!」と声を出してしまいましたが、その中にSIGLENTの箱が入っていました。開けてみると思ったより小さくて机の上でもそんなに邪魔になりません。もう少し大きいのを想像していたのでよかったです。
    梱包箱の中には代理店の保証書が入っていました。故障などの時はここに連絡して修理してもらうことになります。
    梱包箱の中に保証書が入っていたということは、代理店で一度検品されたのでしょうか。
  2. ファンの音は許容範囲
    これは個人差があると思いますが、海外のレビューとかを読んで覚悟していたほどではありませんでした。と、いうのも他の計測器のファンの煩さに慣れているせいかも知れません。オシロでも広帯域のものには大型ファンが何個もついていて爆音/爆風ですので、これに比べればなんということはありません。Windowsベースでは無いというのも省エネに貢献しているのでしょうね。ただし、静かな部屋では結構気になるとは思います。風切り音に混じって少しジジジという音もします。
  3. 普通に使える
    大切なことです。操作にそんなに悩むこともなく、簡単に使えます。メニューは日本語に切り替えることもできますが私は英語のまま使用しています。電子マニュアル(多分英語のみ)が内蔵されています。
  4. マウス操作がオススメ
    タッチスクリーンで操作できますし、レスポンスも悪くないので使いやすいのですが、USBマウスをつないで使うのがオススメです。私はトラックボールを使用しています。狭い実験机ではマウスのスペースを確保するのが難しいです(お前だけだろ!)が、トラックボールだと最初に場所を確保すれば良いので重宝しています。ただし、ドライバが無いので、使えないボタンなどはありますよ。
  5. 付属プローブはオートセンスに非対応
    SDS2104X Plusの売りの一つにプローブのアッテネータ自動検出機能があり、そのために入力BNC端子の周りに検出用の金メッキ(フラッシュかな)のリングがあります。でも、付属のプローブは自動検出に対応していませんのでメニューからマニュアルで切り替える必要があります。なんだかなぁ…そんなとこやぞ。
    おそらく、プローブにx1,x10を切り替えられるようなものを選んだからだと思いますが。
  6. キャリブレーション信号がイマイチ
    プローブの補正調整用にキャリブレーション出力がありますが、あまり精度が高くないようです。周波数1kHzのパルスなのにぴったり1kHzではありません。おそらく±100ppmは仕様の範囲内ということでしょうか。そして肝心の波形の立ち上がりも少し鈍っているようです。ちなみに内蔵のAWGから1kHz, 1Vppの矩形波を出力してプローブに入力すると、周波数、立ち上がりともに問題ありませんでした。ちょっと残念な仕様ですね。
  7. タイミング精度は良さそう
    キャリブレーション信号の周波数精度がイマイチなのは上に書きましたが、信号に10MHzのGPSDO出力を入れて測定すると周波数カウンタはピッタリ10.00000MHzを表示しましたので、タイミングの精度はそれなりに良さそうで、ジッタ特性も悪くはなさそうです。スペック上は初期±1ppmで、他社に比べても良い精度のようですが、趣味の環境では調べる術がありません。
  8. ERES(Hi-Resolution)はMathモードの中
    10bitモードをサポートしたのでHi-Resolutionモードは無くなったのかと思っていましたが、Mathモードの中にありました。デジタルフィルタ処理で解像度をあげているようですが拡張ビット数を大きくすると表示波形に誤差(ノイズ)が出るようです。多分、表示画面内のサンプリングデータで処理しているため、表示画面の両端に近いところに不連続点が表示されるのだろうと思います。拡張ビット数を小さくすれば改善されます。改善を望みたいところですね。
  9. 10bitモード使用時は100MHzまでの対応
    SDS2104Xの売りの一つに垂直解像度10bitがありますが、ADコンバータの制限から周波数帯域は100MHzの制限があります。元々SDS2104X Plusは帯域100MHzなので関係ありませんが、オプションで帯域拡張を考えている人は注意が必要です。
    また、10bitモードではサンプルメモリ数が半分になります。8bitなら1byteで保存できるけど、10bitは1byteで保存できないため2bytes使っているからでしょう。
  10. 2GSa/sが使えるのには制限がある
    ch1とch2、ch3とch4でADコンバータを共用しているため、共用しているchの組合せでは最高サンプリングが1GSa/sに制限されます。2GSa/sで使いたい場合はch1とch3の組み合わせで使う必要があります。そして、どうも3ch同時に使う場合は単独で使っている入力も1GSa/sになってしまうようです。(間違ってる?)
  11. FFTも意外と使える
    あまり期待していなかったFFTですが意外と使えます。もちろん専用のRFスペアナとは比べ物にはなりませんが…
    分解能を上げるにはサンプル数を増やす必要があるので、引き換えにレスポンスが悪くなるのは我慢です。
    SCカットの10MHz OCXOの出力をFFTしてみましたが、基本波の5MHzを確認することができました。ピークをリストアップする機能もありますので、信号のスプリアスも見ることができます。便利。

RIGOL MSO5104はキャンペーンでオプションがバンドルされていることが多いので、SIGLENT SDS2104X Plusより機能アップして販売されていることが多いようです。
でも、SIGLENT SDS2104XPlusも真面目に作られていると思います。特にアナログなどノイズを気にする使い方にはSIGLENTが優れていると思います(RIGOLはもっていないので直接比較はできないので,YouTubeやWebの情報ですが)。オススメです。

RIGOLが人気の理由の一つに、hack(というかcrack)によりオプションを解放できることがあるようです。H/Wはシリーズ内でどれでも一緒ですから安いのを買ってhackしている人が多いのかも知れませんね。

SIGLENT もできるようですが、私はこのまま使います。

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