GPSDOのログの周波数を見ていると時々周波数が変動しています。100uHz以下の変動は誤差だと思うのですが、500uHz以下とは言いながら1日に数回は周波数の変動が観測されます。
前回のブログにも書きましたが、本当に周波数がずれているのか、それともGPSDOの1PPS出力のジッター等の影響なのか原因がはっきりしません。Webで公開されている情報や論文などでは1000秒間の平均でだいた1E-10程度の精度のようです。そう言う意味ではあっているのかも知れませんが、気になります…明らかに病気ですな。アマチュア無線も局免は疾っくの昔に切れていて、オーディオはアナログ派だしと言う事で作った信号の使い道も特にないのですが…まぁ、腕試しで始めた事ななので一応延長線上にあると言う事で(笑)
そこで、比較信号としてもう一台GPSDOを作る事にしました。今度は長期安定性を目標としてルビジウム発信機を使います。LPROです。最近は少し数が減ってきて価格が上昇してきていますね。私が購入したものは15Vから24VのDC/DCと10MHzのSMA出力のI/Fボードが付いたものです。eBayで購入し、イスラエルからやってきました。LPROは長い間生産されていたようですが、私が購入したものはSymmetricom製でおそらく2007年製だと思います。最近では小型のセシウム発振機もあるようですが、当然高価で手が出ません。このルビジウム版GPSDOはすでに製作して現在動作確認中です。もう少しデータが取れたらまたご紹介したいと思います。
さて、私がGPSDOを作っていて気づいた点や、製作のコツなどを紹介します。
- OCXOは常時通電が基本
OCXOは求める精度にもよりますが、MV89Aのような高安定度のOCXOでは本来の性能を出すには約1ヶ月は必要です。短時間の電源オフでも再び安定するまでに3日から一週間以上はかかるようです。約7日前に改造のためGPSDOの電源を切りましたが、その後エージング開始しまだFEC制御しているDACの値は減少し続けている状態です。とは言っても0.5mHz以下の変動です。OCXOの継時ドリフトが見えているのでしょうか?
また、周波数カウンタ53131A/53132Aのマニュアルにも電源を切るとエージング期間はゼロから再スタートですと書かれています。なので、電源を完全にオフするACスイッチはついていません。 - OCXOの電源OFF-ONによる周波数リトレースは100uHzの精度要求には満足できなさそうなので、EEPROMにDAC値を保持し、起動時にそのDAC値を再設定してもあまり意味はなさそうと考え実装していません。オーブンを加熱する時間も必要ですし、約1時間もすれば1mHz台の精度は得られ、現状の仕様でも十分に実用になると思います。
ルビジウムの場合はリトレースも良さそうなのでEEPROMへの保存を考えています。
GPSの受信状態が悪化した場合にDAC値をホールドする簡易ホールド機能は実装しています。 - OCXOのEFC回路は、OCXOのGNDを基準に考え配線(パターン設計)してください。ここの配線が安定度に大きく影響します。また、ダブルオーブンのOCXOは温度が平衡している状態に保つのが良いようです。
- オーブンが安定してしまえば、周波数表示がズレても実際にはそれ程大きく周波数はずれていないようです。もはや、1PPS信号の揺らぎによる影響の方が大きいと言えるのかも知れません。別の基準信号と比較して検証して見たいと思います。
- GPSDOから出力している1Hz(GPSの1PPS信号ではありません)はだいたい標準偏差で1e-8程度の揺らぎがある。1PPS信号と同期しているわけではありません。
1PPS信号とのズレが大きくなった場合は一度1Hz信号のタイミングがリセットされ、不連続が発生するので注意が必要です。 - LCD表示がおかしくなることがあるかも知れません。その時はリセットして見てください。
- 電源投入時、スプラッシュスクリーンが表示されるまで数秒かかります。OCXOの発振が安定するまでに時間がかかるためです。
- 温度表示を表示していますが制御には使用していません。単に庫内温度をモニターする用途でのみ使用しています。この表示を参考に急激な温度変化がないような環境にGPSDOは設置してください。
- 試しにPA8ポートにマイコンの内部クロック100MHzを出力しています。ただし振幅が小さいので、使われる場合はCカットで取り出し、後段にバッファアンプを追加するなどしてください。(ご要望により追加しました)
- オーディオ用途のためかDACの温度特性は規定されていないようです。庫内でなるべく温度変化が少ない位置に配置してください。L/R出力にはフィルターを入れ、高周波ノイズをフィルターしてください。FEC制御はほぼDCなので、時定数を大きくしても大丈夫です。
MV89Aで十分にOCXOがエージングされた状態であれば、53132Aで確認したところ、ゲートタイム2秒、サンプリング100回で周波数変動の標準偏差σは 30uHz以下には追い込めるようです。(1秒以下ではもっと変動しているようですが) - マイコンSTM32F411CEU6(Black Pill)モジュールから25MHz水晶発振子を取り外すには、水晶発振子の周り(できれば全体)に半田を盛って、半田を溶かしながらピンセットで水晶発振子をずらすか取り外すと簡単にできます。