GPSDO 10.0MHz基準周波数発振器を作る(7) 〜性能はどうかな?

投稿者: | 2021/05/04

GWになったら作ろうと思っていたルビジウム版GPSDO(GPSDO-Rb)もおおよそ完成し、エージングを開始しました。GPSDOの(推定)周波数表示はもう少し改善されるかなと期待していましたが、OCXO版GPSDO(GPSDO-OCXO)と大きくは変わらないように思えます。(GPSDO-Rbの方がより安定していますが)

長期安定度はRb(Symmetricom LPRO)の方が安定しているようですが、短期安定度はやはりOCXO(Morion MV89A)の方が倍以上良いようです。周波数カウンタ53132Aでゲートタイム 2.0s, n = 100で計測した場合、MV89Aを使ったGPSDO-OCXOはσ=28uHz程度を出すことがあるのに対し、LPROを使ったGPSDO-Rbはσ=68uHzぐらいが最高です。LPROの方がEFC(周波数制御端子)の感度は低いのでGPSDOの回路の差では無く、LPROとMV89Aの性能の差が出ているのだと思います。(uHz = μHzです)

今回は手持ちの設備で測定できた性能をご紹介したいと思います。
測定環境は以下の通りです。

  • オシロスコープ Siglent SDS2104X-Plus
  • 周波数カウンタ Agilent 53132A
    Ext Ref Clock: GPSDO-OCXO(MV89A) 10MHz
    DUT: GPSDO-Rb(LPRO) 10MHz
  1. 10MHz周波数変動
    53132A Gate-Time 2.0s で測定

    単純に周波数測定値を時間軸方向に並べたものです。ピークでは±0.35mHz程度の変動がありますが、平均で見ると±0.25mHz以下の変動に収まっているようです。
    LPROの短期安定度のスペックは < 1.5E-11 だったと思いますので、こんなものでしょうか。
  2. 10MHz周波数偏差(位相変化)
    GPSDO-Rbの10MHz出力の立ち上がりを基準に、GPSDO-OCXOの10MHz出力の立ち上がりまでの期間を測定したものです。
    時間と共に位相差が大きくなっています。これは、二つの周波数がずれていることを示しています。
    この例では、サンプリング 1024個でMax 20.40ns, Min 16.25nsになっています。1秒毎サンプリングするようにしていますので、4.05E-12の偏差です。周波数偏差に換算すると 40.5uHzの偏差がある事になります。部屋の温度変化もさほど無かったのでしょうが、ほとんど直線になっています。
    校正された基準ではありませんので、どちらが正しいとは言えません、言えるのは「測定した1024秒間の平均ではGPSDO-OCXOに対しOCXO-Rbの方が約40.5uHz周波数が高かった。」という事だけです。(制御のアルゴリズムが同じなので、同じ周波数になって当然…)
  3. Allan deviation(アラン標準偏差)
    簡易的に53132Aの周波数測定値からAllan deviationを求めて見ました。

    高精度の基準信号源があれば10-13台の世界を見ることができたかも知れませんが(笑)、信号源を作るのに信号源を購入するのは本末転倒なのでこの辺でよしとします。
  4. 1PPSジッター
    これまでも基準にしているGPSモジュールからの1PPS出力にはジッターがあることを書いてきました。今回、GPSDO-Rbを使って1PPSのジッターを見て見ました。
    先ずはGPSDO-Rbの10MHzとマイコンで生成した1Hzのジッターです。Rbの10MHzをマイコン内蔵のPLLで100MHzに逓倍し、それをタイマーで分周した1Hzとの位相比較です。

    ジッターはありますが、大きなウネリはありません。比較的ランダムなジッターと言えると思います。このようなジッターであれば、おそらく長期間の積分で影響を取り除くことができるでしょう。
    では、1PPSと10MHzの位相比較です。

    大きなうねりが確認できます。もはやジッターとは言えないような大きな変動です。
    これを見ているとアナログ的なPLLでは影響を除去することが難しいように思えます。
    (-750sのあたりにある大きなヒゲは、1PPSと10MHzの位相が逆転したために出たものです。この時の値は98.61nsですので、実際は-1.39nsだったということです)
  5. まとめ
    今回はある限られた期間でのデータをご紹介しましたが、周波数カウンタ等で測定しながら長期間エージングをしていても表示周波数が0.5mHz以上変化しても実際の周波数変動はもっと小さいことが確認できました。まぁ、目安にしかならないということですね。
    時間があれば、GPSモジュールによって1PPSの変動がどのように違うのかも調べて行きたいと思います。1PPSのAllan deviationを測るか…?

今回新たに制作したGPSDO-Rbですが、基本的な回路はOCXO版と同じです。
SWもパラメータ以外は基本的に同じですが、Rb発振器のロック状態をLCDに表示するようにしています。
もし、バイナリーが必要であればコメントで連絡をお願いします。

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