GPSDO 10.0MHz基準周波数発振器を作る(番外編) 〜基板を作って見た1回目

投稿者: | 2021/12/05

一時期、中国の基板メーカALLPCBが無料で試作基板を作ってくれるサービスをしていました。
その時にGPSDOをプリント基板化しました。数か月前のことになりますが。

OCXO, Rb発振器と2台GPSDOをユニバーサル基板で作ってきましたが、回路的にもだいたい固まってきて、そこそこの精度、安定度が得られそうだということが分かり、プリント基板化してみることにしたのです。
これまで、色々と電子工作をしてきましたが、思い付きで製作をスタートし、回路を考えながらハンダ付けするという行き当たりばったりの設計をしてきたので、ユニバーサル基板で回路図が残っていないものがほとんどでした。また一品ものなので、回路図を残す必要性をあまり感じなかったというのもあります。後から改造しようと思っても回路図が残っていないため、昔の 記憶を辿りながら回路図を起こすということも度々でした。
このGPSDOは、大先輩が実験と評価をしていただけるということでしたので、珍しく回路図を先行して作成したのです。また、その時に回路図CADとしてKiCadを使い始め、意外と便利に使えそうだと感じました。ご存じのようにKiCadは回路図から基板アートワークまで一貫して使えるもので、しかも無料で使えるというアマチュアにはもってこいのCADです。回路図と部品のライブラリをキチンと作っておけば、パターンの失敗もありません。KiCadは使い方の情報も多いので、基板発注に必要なガーバーデータの作成なども迷わずにできました。ほとんどは触ってみながらのカットアンドトライでしたが、トラ技の特集記事についていたDVDもかなり参考になりました。
ALLPCBにガーバーを提出して2日とかからずに基板作成ができました。そしてDHLで発送してもらい、発注から一週間程度で手元に届きました。こんなに手軽につくれるならサクッと基板を設計して発注してしまうのが利口かもしれません。ALLPCBの無料キャンペーンは終了しましたが、DHLより安価な輸送方法を選べば、期間は少しかかりますが、$30程度で試作基板を作成することも可能です。

さて、本題のGPSDO基板ですが、KiCadの回路図で信号線ラベルがダブっていて、違うパターンと接続していたこと、ライブラリの選択を間違えて2.5mmピッチのコネクタを配置すべきところに2.0mmピッチのコネクタを配置してしまったこと、シルクの位置を間違えたことなどで一部修正が必要でした。よくみると変な接続や形になっているパターンもありました。どれも、私のケアレスミスなのですが)…恥ずかしい。

まずは、部品を実装し動作している状態です。OCXOはFE-180を使っています。

以下、試作した基板での実装方法や修正箇所です。(次回修正基板作成のための備忘録)

  • 部品リファレンスの表面シルクを間違えていました。裏面のシルクは正しいです。
    R12とR21が入れ替わっていました。
    R11とR19が入れ替わっていました。
  • パターンを間違えていました。
    U1 #2と#3が逆です。OPアンプのシンボルを回転させるのを忘れてました。
    部品面(表面)側U1の#2,#3ピンのパターンをカットします。
    ハンダ面(裏面)側にジャンパー線で修正し、#2,#3ピンのパターンを入れ替えます。

    U2 #9とR44が誤って接続されています。KiCadで配線ラベルとコネクタラベルがダブっていて接続されていました。
    U2 #9ピンからのパターンをカットします。
  • 3端子レギュレータU9,U5,U4にはヒートシンクをつけた方が良いです。
    ギリギリヒートシンクはなくても大丈夫かなと思ってましたが、やっぱり熱かった。
    ケースに入れると厳しいと思います。適当なヒートシンクを着けたほうがよいです。アルミ板でもよいと思います。
  • J11,J8,J6,D1,J9が2mmピッチのコネクタになっていました。2.5mmピッチのヘッダーコネクタでは狭いので一ピン毎にハウジングを外しました。
  • OCXOの部分はショートしないようにカプトンテープで保護します。OCXOはかなり高温になりますので、普通のテープでは少し心配です。また、OCXOの穴径は細目に作っていますので、ハンダ付けするとなかなか外せません。まずは仮接続で動作確認し、問題ないことが確認出来てからしっかりとハンダ付けします。

回路図です。手持ち部品の都合や、部品を実装しながら抵抗値などを変更している箇所もありますので回路図と実際の基板は定数が異なっている場合があります。

大体の抵抗は比率が同じであれば近い値のものを使ってもOKです。例えば、R20,R21はU11のゲインを決めている抵抗ですが、2.2kΩを2.0kΩにしても大丈夫です。ただし、R20とR21は同じ値にします。R12,R13,R15,R16も同様に1.1kΩでも大丈夫です。 (厳密にはオフセットドリフトに若干影響違いがでますが気にするほどのことではないでしょう) 1kΩなどの抵抗はよく使うので在庫が少なくなっている場合がありますからね。ただし、温度特性は気にしたいところなので、金属皮膜抵抗を使いましょう。

R52, R53, R54はノイズ対策ですが、これも470Ωぐらいまでの適当な値を選んでも大丈夫です。1kΩだとちょっと気持ち悪く、背中がゾワゾワするかなという感じ(でもおそらく大丈夫)です。

PDF版はこちら。

Ref電圧が出力されているOCXO, 手元にあるRef電圧出力がないOCXO, LPRO/LPRO-101などのアナログ電圧で周波数できる発信器などと組み合わせて使えるようにしていました。必要に応じて部品の実装/非実装を分けます。GNDパターンの接続を変えられるようにジャンパーピンやパターンを配慮しています。電源構成、GNDループにより適切なパターンが選べます(多分)。

10MHz出力はCMOS出力(0, 5V)です。CMOS出力直接用、正弦波出力用の2系統用意していますが、正弦波出力用の回路はありません。正弦波出力が必要な場合は、後段にフィルターとバッファーアンプを挿入します。
出力インピーダンスを50Ωなどにしたい場合は、IC U2の出力抵抗R34,R35,R37,R38を変更してください。元々は出力同士を接続するため(KiCADのエラー回避も含む)に入れた電流制限抵抗ですが、この抵抗により出力インピーダンスを調整することが可能です。ICの種類によりばらつきがあると思いますので、出力を見ながら調整してください。一応10MHz出力はSMAコネクタで出力していますが、10MHz程度であれば特にコネクタを気にする必要はないと思います。SMAコネクタを使わない場合はJ9から直接取り出してください。

製作、部品実装時の注意事項です。

  • テスターで電源+12V、GNDが短絡されていないかを確認します。
  • 電源以外のICはソケットにして、OCXO、DAC、GPSモジュールなどを実装しない状態で、まず電源が正しく供給されているかをテスターで確認します。この時、できれば、安定化電源の電流リミッタを50mA以下に設定しておきます。もし、過電流プロテクタが動作するようであれば、部品の実装(電解コンデンサの極性など)やハンダブリッジなどが考えられますので、直ぐに電源を切って、原因を調査します。
  • U12には20pin x2列のソケットを使用します。マイコンモジュールは20×1列なのですが、後からチェックするときや、改造するときにジャンパーワイヤーなどを差し込めるように横に1列の空きピンを用意しています。
  • 電源電圧の確認が済んでから、IC、GPSモジュール、DACモジュール、OCXO、LCDを実装/接続します。
  • マイコンへのプログラム(F/W)の書き込みには、STM32用のプログラマ/デバッガST-LINKとSTM32CubeProgrammerを使います。
    【重要】Amazonなどで購入できるUSBスティックタイプの安価なプログラマ/デバッガ ST-LINK/V2を使う場合は、PCのUSBポートの電源がST-LINK/V2を通してマイコンに電源が供給されるため、GPSDO基板の電源と干渉します。電源やPCが壊れる可能性があるので、必ずGPSDO側の電源を切ってからST-LINKを接続してください。できる限り、マイコンをGPSDO基板から取り外し、単体でプロクラム(F/W)を書き込むことをおすすめします。
    《追記》USBスティックタイプのST-LINK/V2は、SWDの3.3Vを接続しなければ、大丈夫なようです。ST純正のST-LINK-V3SETでは、ターゲットの電圧をチェックしていたので、3.3Vの接続が必要と思い込んでいました。

    逆に、ST純正のプログラマ/デバッガ ST-LINK-V3SETはGPSDO側から電源を供給しないとプログラム(F/W)を書き込めません。 (ST-LINK-V3SET側でマイコンの電源電圧を監視しています)

  • Q1は、適当なPcのトランジスタの手持ちがなく、手持にあった FET K10A60Wを使ってますが、あまり適切なトランジスタではありません。他のトランジスタを使用する場合はピンアサインに注意します。(FET K10A60W用のシルクになっています)  2SC2655なども使えます。
  • JP3, JP4はOPアンプの電源電圧切り替え用ジャンパーです。使用するOPアンプによって切り替えます。レールツーレールでないOPアンプの場合は、9V(JP4)を選択します。 反対側のジャンパーはオープンにします。今回はNJM5534DDを使用しましたので、9V(JP4)をショートし、5V(JP5)はオープンにします。なお、この回路ではOCXOの周波数調整用電圧(EFC)はプラス側しか出力できません。プラスマイナスで制御するタイプのOCXOを使う場合は、別に外付けで回路が必要です。
  • U13、R18、R19、R6はRef電圧として5Vが出力されるOCXOの場合は未実装とします。Ref電圧が5V以外のOCXOを使う場合はR4,R6で電圧を調整します。
    この回路(一般的なシリーズレギュレータ)ではU1の#2ピンと#3ピンが同じ電圧になるようにフィードバックがかかります。仮にRef電圧が4.5Vのものを使うときは #2ピンの電圧が 5[V] x R6/(R4 + R6) = 4.5[V]となるようにR4とR6の組み合わせを決めます。汎用のOPアンプであれば、入力インピーダンスは結構高いのでR4,R6が高抵抗でもさほど気にすることはありませんが、NJM5532DDやNJM5534DDはOPアンプとしては入力インピーダンスが低めなので1kΩぐらいで抵抗を選ぶと良いでしょう。
  • U14,R23,R24,R25,R29は未実装とします。
  • GPSモジュールは、ATGM332D, ATGM336Hを推奨します。秋月電子のMT3339(MediaTek)モジュールも使用可能ですがSW3をINV側に切り替えます。U-Blox M8NでもOKです。
  • U1は適当なOPアンプでOKです。ただし、高速なOPアンプを使用する場合は、発振する可能性がありますので、注意してください。発振する場合はC16の容量で調整します。必要に応じてR7を使いループゲインを下げることも可能です。
  • SW1A、SW2AはOCXOの周波数制御電圧(EFC)処理の切り替えです。SW1Aは、DACからのEFC電圧が低くOCXOの制御ができない場合に3側(AMP)に切り替えて使用します。OCXOがFEC電圧2.5V程度で10.000000MHzに調整できるようであれば、1側(THRU)に切り替えて使用します。問題なくOCXOの周波数を制御できるようであれば、こちらの設定を推奨します。
    また、NMJ5534DD等のようにレールツーレールでないOPアンプを使う場合は、低い電圧は出力できません。その場合はSW1Aを1側にします。
  • SW2AはOCXOをフリーランにするスイッチです。通常は1側(GPSDO)で使用します。
    3側(FREE)はOCXOをフリーランでテストする場合に使用します。テスト以外で使用することはありません。
  • U11Aは、なるべくオフセットの温度ドリフトが小さく、ノイズが小さいOPアンプを使用します。U11Cのブロック(RV1,C22)は使わないOPアンプもあります。まずは未実装でOKです。回路図ではU11 NJM5534DDをゲイン2倍で使っていますが、メーカーの推奨は3倍以上だったと思います。容量性負荷をドライブするような使い方ではないので発振等はしないと思いますが、もし発振してしまった場合はC22に68pF~100pF程度のコンデンサを入れてみてください。このEFC回路は、ほぼDCを送るだけなので、周波数特性を気にする必要ありません。
  • U12は、モジュールに実装されている25MHz水晶を外します。写真では横にある水晶の負荷容量コンデンサがついたままになっていますが、これも取り外します。

    OCXOの10MHzを波形成形した信号を外部クロックとして入力するためのリード線を直接ハンダ付けします。

    J11Aに接続し10MHzクロックを供給します。
  • J4にはOCXO用の電源を供給します。+12V/+5Vとなっています。レギュレータ等を介せずに直接OCXOに供給されるので、OCXOの電圧に合わせて供給電圧を変えることが可能です。なるべくノイズが少ないきれいな電源を供給します。デジタル側の+12Vとは独立しています。
    OCXOからRef電圧が出力されていないもの、電圧が5Vでないものは、U13、R18、R19、R6を実装します。上で説明したR4,R6の調整も忘れずにしてください。U13はピンアサインが共通であれば、他の基準電圧ICに変更することも可能です。その場合もR4,R6の調整を忘れずに。また、R18,R19の基準電圧ICの仕様に合わせて変更したほうが良いかもしれません。
  • LPROなどのRb発振器を使用する場合は、X1を実装せずにJ7から10MHzを供給します。また、EFC電圧はJ5 #5ピンに接続します。

修正が必要な上記の基板ですが、数枚余裕があります。もし、基板改造が必要なことをご理解の上で作ってみたいと思われる方は honkytonk.jp[at]gmail.com までご連絡ください。実費程度でお分けしたいと思います。(日本国内に限ります)
最近の半導体不足で部品が入手難で高騰しており、なかなか製作はむつかしいかと思いますが…

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    個人使用、個人以外でも実験目的であれば試していただくのは自由です。ぜひ、追試/評価をお願いします。
    もし、このGPSDO作られた方は、評価結果や感想などを教えていただければ嬉しいです。

GPSDO 10.0MHz基準周波数発振器を作る(番外編) 〜基板を作って見た1回目」への6件のフィードバック

  1. Marco BARTOLI

    Complimenti per il proggetto, davvero ben curato.
    Potresti inviarmi il gerber del pcb ?

    Grazie

    返信
    1. honkytonk 投稿作成者

      Ho inviato i file Gerber via e-mail.

      返信
  2. Giuseppe Giuseppe

    Ciao, complimento per il progetto, sarei interessato a costruire uno, è possibile avere il Gerber per il pcb.
    grazie

    返信
    1. honkytonk 投稿作成者

      Grazie per il tuo interesse nel mio progetto GPSDO.
      Ti ho inviato il file Gerber via email.

      Sto utilizzando Google Translate

      返信
  3. Giuseppe

    Hi, congratulations on the project, I would be interested in building one, is it possible to have the Gerber for the pcb.
    Thank you
    Sorry for the English I’m using Google translator

    返信
    1. honkytonk 投稿作成者

      Thank you for your interest in my GPSDO project.
      I have sent you the Gerber file via email.

      返信

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