電気関係の仕事をしている人にとっては日常的に使うデシベル[dB]ですが、電子工作やアマチュア無線初心者にはなんとなく難しいと思われている方もいらっしゃるようですので、なんとなく説明してみたいと思います。
デシベルは、dBと表します。始まりの単位はB(ベル)で、電話を発明したグラハム・ベルさんの名前から付けられたものです。それに1/10を表すd(デシ)をつけたものです。今ではあまり使わなくなりましたが、dL(デシリットル)って習いましたよね。あの「デシ」と同じです。1[L(リットル)] = 10[dL(デシリットル)]でしたね。つまり、d(デシ)がつくと1/10の単位であるこを表すことになるのです。1[dL] = 0.1[L]です。
dB(デシベル)も同じです。だから10倍して計算するんです。つまり、デシベルは電力の増幅比、減衰比の対数をとったものを10倍したものとなります。ちなみにc(センチ)は1/100, m(ミリ)は1/1000ですね。
例えば、入力電力と出力電力の比が10倍だったとき、常用対数logで表すと、log10 = 1ですね。 100倍だとlog 100 = log 102 = 2 log 10 = 2でしたね。 1/10倍だと、log 1/10 = log 10-1 = -1 log 10 = -1 になります。高校の数学の復習です。dB(デシベル)で表すには 10倍すればよいことになります。
つまり、 電力10[倍] → 10[dB], 100[倍] → 20[dB], 1/10[倍] → -10[dB]です。
次に電圧の場合を考えてみます。抵抗値がR[Ω]の時にこの抵抗で消費される電力P[W]は、この抵抗の両端にかかる電圧をV[V]、この抵抗に流れる電流をI[A]とすると。 P = V I[W]です。 電流Iはオームの法則により I = V/R[A] ですから、P = V(V/R) = V2 /R [W] とも表せます。
ある回路の入力電力がPi[W]その時の入力電圧がVi[V]、入力抵抗がR[Ω]だったとすると、Pi = Vi2/R[W]と表せます。同様にその回路の出力電力Po[W]、出力電圧Vo[V]、出力抵抗がR[Ω]だとすると、Po = Vo2/R[W] と表せます。ここで、入力抵抗と出力抵抗はR[Ω]で同じであることに注意してください。
入力電力Pi[W]と、出力電力Po[W]の比、Po/Piを求めると、この回路の電力増幅率が得られます。
Po/Pi =(Vo2/R) / (Vi2/R) = Vo2 / Vi2=(Vo/Vi)2[倍]となります。これの常用対数logをとって10倍すればdBが得られることになります。
回路の電力利得を電圧を使ってdBで表すと 10 log Po/Pi = 10 log (Vo/Vi)2 = 10 x 2 log(Vo/Vi) = 20 log(Vo/Vi)[dB]となります。これにより、電圧利得[dB]は、電圧の比の常用対数logをとって20倍したものが電力利得[dB]とおなじになることが分かりました。さて、「入力抵抗と出力抵抗はR[Ω]で同じ」としたことを思い出してください。つまり、入力抵抗と出力抵抗でないとこの計算は成り立たないないことになります。
でも、もし、抵抗が大きく、ほとんど電流が流れない場合はどうでしょう。
この場合も、≒ 20 log(Vo/Vi)で表せますね。なので、電圧だけを考える場合の電圧利得[dB]は20 log Vo/Vi [dB]になるのです。
抵抗R[Ω]と書きましたが、これは交流にも考え方を拡張することがで、これをインピーダンスと呼び一般的にはZと書かれることが多いです。単位は抵抗と同じ[Ω]です。(中身は、周波数に関係しない抵抗分と周波数によって変化するコンデンサ、インダクタからなるリアクタンス分を合わせたものになります)
このように、電圧利得[dB]は 20 log Vo/Viで得られますが、インピーダンスをどのように取り扱っているかは考えておく必要があります。
しかしながら、特にアナログ回路では、インピーダンスを規定せず、電圧利得(減衰)としてdBが使われることが多いのも事実です。これは、以下のことが前提になっています。
- 入力インピーダンスが高く、入力抵抗が入力信号電圧に影響が与えないとみなせる。
または、入力信号のインピーダンスが低く、入力抵抗の影響を受けないとみなせる。 - 出力インピーダンスが低く、負荷抵抗により出力信号電圧にほとんど影響を与えないとみなせる。
または、負荷抵抗が高く、出力インピーダンスの影響を無視できるとみなせる。 - そもそも、インピーダンスを無視して電圧比だけを考える。
電力利得と電圧利得は2倍の関係があることが理解していただけたでしょうか。
電力増幅率2倍の回路の電力利得は、10 log 2 = 10 x 0.3010 = 3.02 ≒ 3[dB] ですね。
これを電圧利得にすると 2 x 3 = 6[dB]となります。
特に、log 2 = 0.3010, log3 = 0.4771 は、よく使うので暗記しておきましょう。
回路屋さんが、電圧利得で話す場合は、6[dB] = 2[倍] , 10[dB] = 約3[倍]です。
一アマの試験では、log 2 = 0.3010が切りが良いので良く使われます。
これまでの利得は、入出力の比で話をしましたが、RF系で単位(絶対値)として良く使われるものに、dBm, dBμVなどがあります。
- dBmは、1[mW]を基準にしています。
電力[W]なのでインピーダンスを考える必要があります。
RFでは、送信系に多い50[Ω]が普通ですが、たまに受信(アンテナ)系に多い75[Ω]が混在して話されてることがありますので、注意しましょう。他にも、音響では600[Ω]だったりと、分野によって違っていたりするので、基準をはっきりしておかないと混乱する原因となります。 - dBμVは、1[μV]を基準にしています。こちらは電圧利得ですが、dBmからdBμV、dBμVからdBmに換算する場合は、インピーダンスを考慮しなければなりません。また、終端電圧や開放端電圧なのかも確かめる必要があります。dBμ とVが省略されることもあります。