周波数カウンタ

投稿者: | 2023/05/31

GPSDOを作っていると、どれぐらいの周波数精度が出ているかが気になってきます。周波数を測定するには周波数カウンタです。もちろん、これに加えて精度の高い基準周波数が必要になります。基準周波数が欲しいと思ってGPSDOを作っているのに、それを確かめるために更に基準となる信号源が必要とか本末転倒ですね。でも、そんな病、高精度病に侵された人は私だけではないはずです。時間と周波数オタクのメーリングリスト(ML)であるTime-Nutsには、ちょっと、いやかなり狂った(褒め言葉)オタクの方が集っています。私のレベルでは、とてもMLに参加する勇気はありませんが、MLのアーカイブは時々読んでいます。MLにも時々どんな周波数カウンタが良いかという話題がでてきます。アマチュアですから予算は限られていますが、GPSDOを測定するのであれば、HP 53XXXシリーズがよいのではないかと思います。


HPはご存じの通りHewlett-Packardの略称です。元々は計測器のメーカーでしたが紆余曲折があり、計測器部門は切り離されてしまい、Agilentになり、知らないうちにAgilentも(計測器は)Keysightに社名が変わってしまいました。個人的には計測器としてはHPの名前を残してほしかったなーとも思いますが、一方で、計測器を購入するような人はブランド名にはこだわらないので、PCに知名度があるHPを残したのも正解かなとは思います。

HP(Agilent,Keysightも含みます)の周波数カウンタは、53XXXという番号が付けられているようです。現行のモデルは、53230A, 53220Aです。精度も良くなって色んな機能がついています。なんとアラン分散も測定できるようです。でも、50~80万円だそうです。アマチュアにはちょっと手が出ないお値段です。でも、スペアナなら買ってしまうかも(笑)

そこでジャンクの測定器、略してジャン測です。ヤフオクなどを見ていると、設備の入れ替えなどで不要となったHPの周波数カウンタが中古もしくはジャンクとして出品されてることがあります。53132A, 53131A, 53181A等です。もう30年ほど前の測定器ですが、趣味で使うには十分です。周波数カウンタの原理は、名前のとおり、入力のパルスの数(=パルスのエッジの数)をカウントするものです。例えば1秒間のゲート期間中に入ったパルスの数が周波数に相当します。この時の分解能は1Hzになります。なので、分解能を0.1Hzにするにはゲート時間を10秒に、1mHzの分解能を得るにはゲート時間を1000秒にする必要があります。これでは、計測に時間がかかってしまいます。これを改善するために考えられたのがレシプロカル方式です。こちらは、入力パルスの周期を計測し、演算によって周波数を求めるものです。周波数は、周期の逆数です。レシプロカル(reciprocal)とは逆数という意味です。つまり周期を精度よく測定できれば、短時間で周波数の分解能を上げる事ができるということです。HPの53xxxシリーズの周波数カウンタはレシプロカル方式です。10MHzを計測する場合、53132Aは1秒の計測時間で10μHzの分解能で周波数を測定することができます。(2秒程度見た方が安定しますが) このブログで紹介しているGPSDOを測定するには、レシプロカル方式の周波数カウンタが必須と思います。53131A, 53181Aでは次第に測定精度に不満がでる可能性もありますので、予算が許せば53132Aを入手されるのをおすすめします。(まぁ、病気にならなければ普通は53131A,53181Aでも十分だと思います)

私も多分に漏れず、53131Aを入手しました。この53131Aは動作していたものの、しばらくすると故障し自分で修理しました。その時に色々と調べたところ、53131A,53181A,53132Aは、メイン基板は異なりますが、電源基板などは共通だということが分かりました。なんとかなるかなと考え次は53132Aを入手してしまいました。

このシリーズの周波数カウンタで故障が多い箇所は、以下の通りでしょうか。

  • 冷却ファン
    この周波数カウンタは、ACコンセントに接続されると常にファンが回ります。このため、寿命が来ていることが多いです。ファンが動作しているものでも、音が大きくなっているものが大半だと思います。交換は必須でしょう。サイズと電圧が同じ適当なファンと交換すればOKです。簡単です。
  • 電源
    電源ユニットは台湾のデルタ電子製です。「電源が入らない」故障で一番多いのが電源ユニットの故障だと思います。まぁ20年以上使われてきたら、そりゃあ故障もしますわね。でも、電源だったら比較的修理は容易と思います。もちろん、一次側が故障している事もあるので、経験の無い人が手を出すのは危険です。電源ユニットはシリーズで共通のようですが、年代により少なくとも2種類あります。そのうちの一つ(多分新しい方)については、有志の方が起こした回路図が存在しますので探してみてください。
  • VFD(表示管)
    工場や生産現場等で常時通電されていた個体が多いのでしょうか、表示が暗くなっているものが多いです。これも寿命ですね。出品説明の写真を見て判断するか、賭けるかしかないですね。eBayやAliExpressで代替のVFDが入手できるらしいですが、私が見たものは使えそうにありませんでした。また、ヒーター電圧を上げたら少しは改善するという噂もありますが、試したことはありません。エミ減した真空管はちょっとヒーター電圧を上げると元気になるというのと同じですね。
  • ROM
    プログラムが書き込まれたROMが不良になったものです。ROM FAIL(だったかな)というエラーが表示されます。幸いこの不良には当たったことがありません。ROMだけ出品されている事がありますので、うまくいけばそれで復活するかもしれません。(しないかもしれません) ROMはモデル毎に異なります。
  • MAIN基板
    ローカルの電源ぐらいであれば、サービスマニュアルに回路図も載っているようですので修理できるかも知れませんが、FPGAやCPU周りの故障は再起不能かもしれません。MAIN基板は、基板(パターン)は共通のようですが、当然ながら実装されている部品はモデル毎に異なります。また、生産時期により部品やパターンが変更になったりしています。
  • 成型品
    樹脂が経年劣化でボロボロになったものがあります。特にバックの成型品はヒビが入ってちょっと触ると壊れるものがあります。年代物ですから仕方ないですねー、動作には関係しないので割り切りましょう。

私も最初の一台は動作品を入手しましたが、これが壊れて電源を修理してからは、他は「電源が入らない」故障品ばかりを狙いました。おかげで憧れの53132Aを比較的廉価で入手できました。何台か故障品を入手しましたが、運が良いことに全て電源ユニットの故障でした。修理して使っていますが故障個所はまちまちでした。最初は電解コンデンサの寿命かなと思っていたのですが、電解コンデンサの交換だけでは直りませんでした。

電源ユニットは比較的修理しやすいですが、特に一次側を触る場合は十分に注意しないと重大な事故につながります。オシロスコープ等で一次側を安易に触るとブレーカーが落ちたり、場合によっては感電事故やオシロスコープ等が壊れますよ。もし、修理される場合は、自己責任でお願いします。

念のため付け加えておきますが、周波数カウンタだけでなく、これに組み合わせる安定した基準クロック(周波数)が無いと、GPSDO精度を測定することはできません。
と、いうことで、周波数カウンタに加え、ルビジウム発振器を入手し、これもGPSDOにするまでが(周波数)高精度病のセットようです(笑) なので、GPSDOが2台になりますね… では、お大事に~(笑)

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