そろそろ、アマチュア無線の国家試験の時期ですね。電気関係の仕事をしている人には必須のdBも一般の人にはあまり縁がないので、よく分からないと思われている方も多いのではないでしょうか?
以前、デシベル[dB]ってなんだ? でちょっと紹介しましたが、今回は、dBって何のためにあるの?という本質?をダラダラと説明してみたいと思います。皆さんがdBを使う意味を見出していただけると幸いです(笑)
デシベルdBは、2つの信号の相対比(の対数)を表します。アンプ(増幅器)を考えた場合、入力と出力の電力比は増幅率で表され、入力電力に増幅率をかけたものが出力電力になります。リニアアンプとかもそうですよね。
例えば、10Wの信号を入力して100Wの出力を得る場合は、10倍になります。では、100Wが欲しいのに、1Wの送信機しかなかった場合はどうしますか? 性能はさておき、もう一つ10倍のリニアアンプががあれば、リニアアンプ1号で1Wを10Wに増幅して、その10Wの出力をリニアアンプ2号に入力すれば良いことになります。いわゆる直列(シリーズ)接続です。つまり、1[W] x 10[倍] x 10[倍] = 1[W] x 100[倍] = 100[W]です。電力が10倍になるアンプの利得(増幅率)をデシベル[dB]で表すと、10[dB]です。電力が100倍になるアンプの利得(増幅率)は、20[dB]です。 10[倍] x 10[倍] → 10[dB] + 10[dB] = 20[dB]と掛け算(x)が足し算(+)になりました。dBの説明にはこのように書かれているのが多いですね。
でも、このように機械的に覚えても今ひとつ理解できないし、何の役に立つのだろうと考えてしまいますよね。今回は、デシベル[dB]を別の視点から説明してみたいと思います。数学からしばらく遠ざかっていた方にも、なるべくわかるように簡単に説明したいと思います。
さて、今度は、増幅率 4[倍]のアンプ1号と増幅率 8[倍]のアンプ2号を直列(シリーズ)に接続した場合の増幅率はいくつでしょう? はい、4[倍] x 8[倍] = 32[倍] です。 ちょっと、中学の数学を思い出してください 4 = 2 x 2 = 22、 8 = 2 x 2 x 2 = 23です。23は、2の3乗と読み、2を3回掛けるこという意味です。2の部分を基数、3の部分を指数と呼びます。従って 4 x 8 = 22 x 23 = 32 です。この 32 を 2 を基数とした指数で表すと、32 = 25 になります。(2 x 2 x 2 x 2 x 2です)
指数の 5 の部分に注目してください。2+3 = 5です。つまり、同じ基数のべき乗で表せる数字をかけると、指数部分は各々の数の指数を足したものになるのです。この例では、基数を2として2のべき乗で表しましたが、基数を他の数にしてもOKです。世の中で使われる数は、ほとんど10進数です。100は102,1000は103…1[km] = 1000[m] = 103[m]です。10を基数にすると色々と簡単になりそうですね。
では、数を10のべき乗形式で表すにはどうしたら良いでしょう?
では、関数電卓を用意してください。
- 2を10のべき乗で表すにはどうしたら良いでしょう? 電卓で計算してみましょう。
電卓の 2 を押して、次に LOG を押すと 0.301029995….と表示されましたか?
2を10のべき乗形式で表すと、100.3010… になるということです。
中学?高校?の数学で、常用対数 log10 を習ったと思います。電卓のLOGはlog10と同じです。
log10は常用というぐらいによく使うので 10 を省略して log とだけ書くことが一般的です。
(iPhoneの計算機では、log10 と省略されずに表示されていました)
ちなみに、関数電卓にはLNというのもあります。これは自然対数logeのことです。10やeのことを対数の底といいます。 - 次に、4 の LOG と、8 の LOG を電卓で計算してみましょう。
log 4 = 0.602059991… , log 8 = 0.9030899869….となりましたか? つまり、4 = 100.6020… 、8 = 100.9030… ということです。 - つまり、4 x 8 = 100.6020… x 100.9030… とも表せるということです。 はい、同じ基数どうしの掛け算であれば、指数部分を足したものになりますね。
指数の部分は0.602059991 + 0.903089987 = 1.505149978 ですから、4 x 8 = 32 = 101.505149978 とも表せるということです。 - それでは、 101.505149978 を計算して確かめてみましょう。今度は、電卓の10x を使います。
1.505149978 と入力して、10x を押します。31.9999999… と表示されましたか?
ほとんど 32 で合っていますね。(32を正確に10のべき乗で表示するには、1.505149978では桁数が足りなかったのです) - 全ての数を 10 のべき乗で表せば、掛け算は、10を基数として、指数部分は、各々の指数部を足したもので表せるということです。じゃぁ、約束として 10 を基数にすることにしてしまえば、掛け算は指数部分を足すだけでいいじゃないか。というのが、dB の考え方です。dBのdはデシで、㎗のdと同じで10分の1を意味します。(今は ℓ は、筆記体ではなく L を使うそうですね)
1[ℓ] = 10[㎗] です。なので、dBは10のべき乗の指数部分を10倍にしたものになります。 - 今度は、1/4を10のべき乗で表示するとどうなるでしょう? 電卓で計算してみましょう。
まず、1/4を計算します。これは簡単ですね。0.25になりました。では、この0.25のLOGを計算します。-0.602059991になりましたか?
よく見てください、log 4 = 0.602059991、 log 1/4 = -0.602059991 符号が-になりましたが数字は同じです。
利得 4倍は増幅ですが、1/4は増幅ではなく減衰ですね。つまり、増幅率が1より小さい、減衰の場合は符号が-になるのです。 - 1/4は4の逆数です。逆数のlogは、元(逆数にする前)のlogをとって符号を反転させたものになります。
log 2は、0.3010…でしたね。では、log 0.5はいくつになるでしょう? 0.5は1/2です。1/2は2の逆数です。log 0.5 = log 1/2 = log 2-1 = -1 x log 2 = -1 x 0.3010… = -0.3010 です。2-1 の -1の部分がlog 2 の前に出てきただけです。なので、log 2を覚えていれば log 0.5 も簡単ですね。 - では、 増幅率1はどうでしょう? 同じように log 1 を計算すると 0となりました。はい、100 = 1ですからね。dBで表すには、電力の場合は10倍、電圧の場合は20倍すれば良いことになりますが、0なのでどちらも0[dB]です。
0[dB]とは、信号がなくなる(0になる)のではなく、増幅も減衰もしない(そのまま=1倍)ということです。間違えないようにしましょう。 - log 2 ≒ 0.3010、log 4 ≒ 0.6020、 log 8 ≒ 0.9030 でした。そして、4 = 22、8 = 23 です。よく見ると、log 4 = 2 x log 2、log 8 = 3 x log 2 になっています。指数部分を log 2にかけたものになります。
自然界の現象等を考えた場合、物理的には減少することが多いですね。
例えば、光をサングラスを通してみると暗くなります。どれぐらい暗くなるかというと、何%の光を透過させるか、いわゆる透過率によってきまります。
逆に、元の光をどれだけ減衰させるかとも言えます。つまり、サングラスを通ってくる光は、元の光に減衰率を掛けたものです。
更にサングラスをもう一つ通すと、更に減衰率を掛けたものになります。つまり、元の光の強さ x 一つ目の減衰率 x 二つ目の減衰率 が目に入る光の強さになります。光の場合にdBというのはあまり使わないかもしれませんが、仮にdBを使うと、各々のサングラスの減衰率を10のべき乗に変換した指数部分(10倍したもの)を足したもになります。
電気信号も同じです。信号(例えば、電力)をアッテネーターに入力すると、出力(電力)は入力信号にアッテネーターの減衰率を掛けたものになります。もう一段アッテネーターを通すと更に減衰率を掛けることになります。dBで表すと、一段目の減衰[dB] と二段目の減衰[dB]を足したものが、二つのアッテネーターを通したときの減衰[dB]になります。
実際の回路設計では、利得や減衰はきれいな数値にはなることは殆どありません。dBで統一しておけば、アンプやフィルターでの増幅、減衰を繰り返しても足し算で簡単に計算できます。最終的に何倍になるのかを知る必要があるときは、dBから実数に戻すを計算します。まぁ、しばらく使っているとdBだけでも大体何倍かは概算(想像)できるようになります。
アンテナのスペックに利得dBiと書かれていますが、アンテナが増幅するわけではありません。アンテナに供給される電力は送信機で決まっているので、利得が高いということは、指向性によって一方向にアンテナの出力を集中させているということです。つまり、電波が強い方向と弱い方向ができるということです。基準となるアンテナは、isotropic antenna(等方性アンテナ)です。これに対する利得はdBiとdBの後ろにisotoropicのiをつけます。等方性アンテナとは、球状に全方向均一に電波を放射するアンテナです。なので、計算上のアンテナで実際にはありません。
等方性アンテナを基準にしていますので、dBiは絶対値(単位)になります。
ダイポールアンテナの指向特性は8の字ですから、全方向性の等方性アンテナに比べ指向性が一番強くなる方向では放射される電波が相対的に強くなります。このため、ダイポールアンテナの利得は、等方性アンテナに対して約1.64倍となります。これをdBで表すと 約2.15dBiです。(iは等方性アンテナに対してという意味)
仮に、アンテナAのカタログに利得 3.4dBiと書かれていたら、1/2λ ダイポールアンテナとの差はどれぐらいになるのでしょうか?
1/2λ ダイポールアンテナは 2.15dBiですから、アンテナAとの利得の差は、3.4[dBi] – 2.15[dBi] = 1.25[dB] になります。対等方性アンテナの利得から、簡単にダイポールアンテナに対する比を得る事ができました。 この場合、電波が強く放射される方向で比べると 10(1.25/10) = 1.333521432 [倍]ということになります。
電力利得の場合は10倍、電圧利得の場合は20倍になりますが、その説明は以前のデシベル[dB]ってなんだ?を見てください。
では、皆さん、国家試験頑張ってくださいね。
えっ、「お前はどうなんだ?」って? 私、試験嫌いなので(笑)