前回は、オペアンプ(OPアンプ)を使った反転増幅回路を説明しました。今回は、非反転増幅回路について計算してみたいと思います。でも、なんで、わざわざ「非反転」っていうんでしょうかね?
ずーっと疑問に感じています(笑)
非反転増幅回路
非反転増幅回路は、以下のような回路になっています。反転増幅回路と同じように、オペアンプは以下のような理想的な特性をもっているものとします。
- 入力インピーダンスが非常に高い(無限大)
- 出力インピーダンスが非常に低い(ゼロ)
- オープンループ電圧利得(ゲイン)が非常に高い(無限大)
- 周波数特性が非常に良い(遮断周波数が無限大)
- その他の特性も理想的
\begin{align}
入力信号電圧: &v_{i} [V]\\
出力信号電圧: &v_{o} [V]\\
帰還抵抗: &R_{1},R_{2}[\Omega]\\
差動(誤差)電圧: &e [V] (注)自然対数の底eではありません。\\
オープンループ電圧利得: &A
\end{align}
電圧利得
入力信号は\(+\)入力端子に接続され、出力信号\(R_1, R_2\)で分圧された電圧\(v_a\)が、\(-\)入力端子に入力(帰還)されます。
\(a\)点の\(v_a\)は、\(v_o\)を\(R_1とR_2\)で分圧した電圧ですから、
\begin{align}
&v_a = \frac{R_1}{R_1+R_2} v_oとなります。\\
&また、v_a = v_i -e \enspaceですから、\\
&v_i-e = \frac{R_1}{R_1+R_2} v_o \tag{1}\enspaceとなります。
\end{align}
オペアンプは差動入力\(+\)入力端子と\(-\)入力端子間の電圧\(e\)を\(A\)倍に増幅して\(V_{out}\)に出力するので、
\begin{align}
&v_o = eA\\
& e = \frac{v_o}{A} \tag{2} \enspaceとなります。
\end{align}
\((2)\)を\((1)\)に代入して、
\begin{align}
&v_i-\frac{v_o}{A} = \frac{R_1}{R_1+R_2} v_o
\end{align}
これを整理して、
\begin{align}
v_i &=(\frac{R_1}{R_1+R_2}+\frac{1}{A})v_o\\
&=\frac{AR_1+(R_1+R_2)}{A(R_1+R_2)}v_o\\
v_o &= \frac{A(R_1+R_2)}{AR_1+(R_1+R_2)}v_i\\
右辺の分子分母をAで割って、\\
v_o &= \frac{R_1+R_2}{R_1+\frac{R_1+R_2}{A}}v_i\\
\end{align}
非反転増幅回路の電圧利得(ゲイン)\(G\)は、\(\displaystyle G = \frac{v_o}{v_i}\)ですから、
\begin{align}
&G = \frac{v_o}{v_i} = \frac{R_1+R_2}{R_1+\frac{R_1+R_2}{A}} \tag{3}になります。\\
&\frac{R_1+R_2}{A}の部分は、A \rightarrow \inftyとすると、0になります。\\ \newline
&従い、A=\inftyの時\\
&G = \frac{R_1+R_2}{R_1}\tag{4}となります。
\end{align}
\((4)\)式が理想的な特性を持ったオペアンプの非反転増幅回路の電圧利得です。
一般のオペアンプを使う場合でも、周波数が低い帯域ではオープンループ電圧利得は十分に高いので、\((4)\)式を使って計算することがほとんどです。しかし、周波数が高くなってくるとだんだん誤差が大きくなってくることを頭に入れておかないとダメですね。「どこまでも動くと思うなオペアンプ」ということです。データシートをみて設計するようにしましょう。まぁ、特性を求めない回路ではあまり気にしません(笑)
\((4)\)式から分かるように、非反転増幅回路では、電圧利得は1未満にはできません。
また、反転増幅回路とは異なり、入力インピーダンスを高くすることができます。
反転増幅回路のイマジナリーショート/仮想短絡は?
一番最初に計算した通り、\(\displaystyle e = \frac{v_o}{A} \)でしたから、\(A \rightarrow \infty \)のとき、\(e \rightarrow 0\)になります。反転増幅回路の時と同じように、\(-\)入力端子の電圧は\(+\)入力端子の電圧と同じになります。ただし、非反転増幅回路では、\(+\)入力端子の電圧は、入力信号の電圧そのもので、\(-\)入力端子の電圧が負帰還により\(+\)入力端子の電圧が(ほぼ)同じになります。つまり、動作は異なります。
オペアンプの\(+\)入力,\(-\)入力の動作
オペアンプの入力は、差動入力で、\(+\)入力端子と\(-\)入力端子があります。\(+\)入力と\(-\)入力の差が増幅されて出力になります。具体的には、\(+\)入力の電圧\(> -\)入力の時、出力は\(+\)になります。逆に、\(-\)入力の電圧\(> +\)入力の時、出力は\(-\)になります。出力から\(-\)入力側に帰還信号を入れているということは、出力が大きくなると帰還により\(-\)入力側の電圧も大きくなり、結果的に\(+\)入力と\(-\)入力の差が小さくなり、出力が抑えられるということになります。これを負帰還といいます。
逆に、出力から\(+\)入力に信号を帰還した場合は、どんどん出力が大きくなります。これを正帰還といいます。実際の回路では、出力が張り付いたり、発振してしまうことになります。マイク(入力)とスピーカー(出力)を近づけるとハウリングするのと同じ原理です。
反転増幅回路も非反転増幅回路も、出力信号が\(-\)入力側に帰還されているので、負帰還(Negative Feedback)回路です。
最初に説明しておくべきだったかも知れません。
今回は、非反転増幅回路の増幅率について計算してみました。