アマチュア無線機は、大型固定機を除き外部電源が必要なものがほとんどです。
最近の電源は軽量で大電流がとれるスイッチング電源がほとんどですが、やはり無線機、特にHFに使うには昔ながらのシリーズ電源がノイズが少なくて良いですね。しかし、シリーズレギュレータはトランスが必要で、その分大きく重くなってしまい高価です。
さて、知人からTRIO TS-120用の電源、PS-30が壊れたということで修理の依頼がありました。
あまり自信はなかったのですが、シリーズ電源ならなんとか修理できるかもと引き受けました。
故障の症状は、「出力電圧が18Vから調整できない」ということでした。PS-30は13.8V固定ですが、誤差電圧検出のXVR2が半固定VRからVRに変更されパネルに取り付けられていました。電流計、電圧計も取り付けられていて、普通の電源として使えるように改造されていました。
幸いなことに海外向けPS-30の回路図はインターネットから入手することができましたが、ちょっと動作が読み取りにくいので、書き直してみました。
トランスやノイズ対策のコンデンサを省略した基本回路図はこんな感じでした。(C1は、68000uFの誤記です)
オーソドックスな回路ですが、R3があるために、整流後の電圧が直接出力される回路になっています。
おそらく、Q1,Q2の損失(or温度)対策だと思います。無線機が接続される前提であれば、受信状態でも1A以上の電流が流れれば、出力電圧はだいたい13.8Vになるだろうという事でしょう。しかし、これでは消費電力が少ない無線機には使えません。
対策としては、R3を削除することです。ただし、単純にR3を削除してしまうと、電源投入時にQ2_1のBに電圧がかからないため、電圧が出力されません。対応として、姑息ですが Q2_1が動作しQ1_1のBを引っ張って電圧が出るまでQ2_1 Bに整流後の電圧を供給することにしました。
対策として追加した回路は青の一点鎖線で囲んだ部分です。これで、電源投入時はD9を通じてQ2_1 Bに電圧を供給しQ2_1, Q1_1, Q1, Q2をONします。これにより、13.8Vが出力されると、D9は逆バイアスとなり誤差増幅回路から切り離されます。また、D30を抵抗に置き換えても良いでしょう。
改造する前にPS-30を確認すると、Q1, Q2がショートしていました。また、Q1_1も劣化しているようです。なんと、Q1,Q2の 2N5885と Q1_1の 2SA671Bはセカンドソースですが秋月電子で購入可能でした。
これぐらいの電圧であればさほど気にするほどではありませんが、2N5885よりVce耐圧が高い2N5886も入手可能でしたので、これに交換することにしました。
また、2SA671の代わりに手持ちの2SB941を使うことにしました。
故障、劣化した部品を交換し、R3を取り外し、対策回路の追加改造をすると、無負荷の状態でもVRで設定した電圧(13.8V)が出力されるようになりました。これで、ハンディトランシーバーのような負荷の小さい機器でも安心して使えます。
なお、この回路ではVRを調整しても電圧の可変範囲はそんなに広くありません。