VX-3といえば、皆さんご存知の超小型144/430MHzハンディトランシーバーです。元はSTANDARDの開発で、今はYAESUが継続生産しています。かなり前の開発機種で1Wと小出力ですが、なかなか代替になるようなハンディトランシーバーが出てこないですね。私も2局用にSTANDARD、YAESUブランドの2台持っています。
便利に使っていたVX-3ですが、ある日アクセスできていたリピーターにアクセスできないことに気がつきました。メータは振れているのですが。別のリグで受信してみると電波は出ているようですが、至近距離なので判断がつきません。他にアマチュア無線をされている方がいれば確認できるのですが、無線を再開したばかりで知り合いもいませんでした。
そのまましばらく時間が経ちましたが、終端型電力計を入手し測定したところ、ちっとも針が振れません。ファイナル(終段FET)が壊れてしまったようです。ほとんど受信にしか使っていなく、あまり心当たりはないのですが、アンテナの状態が悪いときに電波を出して壊してしまったのでしょうね。
VX-3の取り扱い説明書にも記載されていますが、ファイナルは ルネサスのRQA0003DNSです。回路図は海外向けのVX-3Rのものが入手できました。ファイナルはどこについているかというと、なんとPTTスイッチと同じ基板についています。この基板ユニットはSW Unitというらしいです。
おそらく、修理の時はこのユニットごと交換となるのでしょう。
放熱は基板を通してダイキャストフレームに逃がす構造ですが、それだけでは放熱が足りなかったのでしょうか、ファイナルの上にグラファイト(?)シートが貼り付けられています。私のVX-3はこのシートがめくれていました。そのため、放熱が悪くなっていたのでしょうか? 相手もいないので、長く送信したことはないから、これが原因とも思えませんが…
VX-3は現行機種なので、メーカの修理も受けられるし、サービスパーツも入手可能と思いますので、正規ルートで修理されるのをおすすめします。費用はかかるでしょうが、安心確実です。でも、私はスキルアップと修理代節約のため自分で修理することにしました。VX-3は2台所有しているので、壊れて受信専用になっても大丈夫ですし、ファイルが壊れた状態では既に受信専用ですからね…
準備するもの
- ファイナル RQA0003DNS
何とか入手できました。本物かどうか怪しいですが、型名刻印も同じでとりあえず使えてます。 - ヒートガン
壊れたファイナルを取り外すため、また、新しいファイナルをハンダ付けするため。 - クリーム半田
- テスタ
- ピンセット
- ハンダごて
- ハンダ吸い取り機とハンダ吸い取り線
- パワーメータ(できれば、終端型電力計)
修理後の確認用。無ければ、144/430MHzを受信できるリグ。
分解
まずは、VX-3を3枚に下ろします。
外したねじ類はなくならないように箱などに入れておきます。
私は、100均で購入した製氷皿を使っています。
仕切りがあって、テーパーがついているので部品を取り出しやすい。なんといっても蓋がついているので、作業を中断するときや複数の機械を平行して修理するときなど、蓋をして(念のためテープを貼るなど)おけば、積み重ねておけるので便利で安心です。似ているようで微妙にサイズが違うねじ等間違えも少なくなるし、組み立てる時にねじが余ったりすることも少なくなり、おすすめです。
SW Unitとメイン基板の接続は、コネクタではなくハンダ付けです。ハンダ吸い取り機、ハンダ吸い取り線を使ってハンダを取り除きます。(これはハンダを取り除いた状態の写真です) 右側の四角い部品がファイナルFETです。
SW Unitの裏には、コイルがついています。変形させないように注意して作業します。
作業に集中して写真を撮り忘れましたが、SW Unit基板だけの状態にしたらヒートガン(ブロア)を使って、ファイナルを取り外します。ファイナル以外の部品が外れたり、ダメージを受ける恐れがありますので、ファイナル以外の場所にはなるべく熱が行かないように注意します。ヒートガンでしばらく温めハンダが溶けたタイミングで慎重にピンセットでファイナルを取り外します。もう、ファイナルはこわれているので、ファイナルだけ集中して加熱したらよいと思います。
ファイナルを取り外したら、残ったハンダをきれいに取り除きます。
ファイナルのランドにクリームハンダをつけて、ファイナルを取り付けます。
ピンセットでファイナルがずれないように抑えながらヒートガンで温めてハンダ付けします。
クリームハンダは、少ないと接続不良になったり、逆に多すぎるとはみ出して、他の電極とショートするので注意が必要です。
ハンダ付けができたら、ファイナルの電極がショートしていないかをテスターで確認します。
もし、ショートしていたり、接続がきちんとされていない場合は、もう一度やり直しです。
組み立てと動作確認
分解したときと逆の順番で組み立てます。
私は、仮組の状態で外部電源をつないで、動作確認したのですが、基板とアンテナコネクタをビスで固定するのを忘れた状態で電力計につないで、「電力が出ないな…失敗したかな…」と焦りました。その時、思わず、ファイナル付近を指で触って軽い高周波やけどをしてしまいました。しばらくヒリヒリと痛かったです(笑) アンテナコネクタはちゃんと(ビスで)接続しましょう。
電力計や他のトランシーバーで動作を確認できたら修理完了です。
一人で確認する場合は、トランシーバーの距離を離すことは難しいので、なるべく電力計で確認することをおすすめします。(近いと直っているのか直っていないのか判断できない…)
修理後のVX-3です。
右にある、小さな四角い黒い物体が壊れたファイナルです。
イヤホンマイクは、以前紹介したものの改良版?です。スイッチ/マイク部分が小さくなっていて使いやすいです。
無事修理が完了し、VX-3が復活しました。
VX-3は現行機種ですので、故障した場合はメーカーで修理されることをおすすめします。
自分で修理される場合は自己責任でお願いします。