1.2GHzのリグが欲しいなとオークションをさがしていました。現行モデルで1.2GHzに対応した無線機は数少ないためか、どれも結構高値で出品、落札されています。中古モービル機にもかかわらず、20数年前に私が新品で購入したときと同じような値付けのものもあります。メーカーが1200MHz対応の新機種を出してくれればよいのですが、アマチュア無線人口減った今では、なかなか新規開発は難しいのでしょうね。
まぁ、アマチュアは二次業務で、移動局は出力1W以下の制限はあるものの、1200MHzバンドは意外とよく飛ぶし、アンテナも小さくできるので面白いバンドと思うんですけどね。
しかし、高騰している1.2GHz対応のモービル機に対し、固定機は比較的安い価格で落札されているようです。しかも、オールモードです。そこで、モービル機ではなく、ちょっと置き場所を考えないといけませんが、固定機を狙う事にしました。ターゲットはKENWOOD TS-790です。1200MHz対応はちょっと高くなりますが、それでも機能とコストを考えるとメリット有です。
入手したTS-790は、Sモデルのハイパワー機で、1.2GHzオプション付きでした。
動作確認なしのものでしたが、思ったよりきれいで電源も無事入りました。初日に動作確認したときはとりあえず問題なく動作したのでラッキーと思ったのですが、翌日再確認すると1200MHzの調子がおかしくなっていました。動作保証なしの機械なので仕方ありません。むしろ、自分で修理するのも楽しみの一つなので、ちょっとわくわくしたり(笑)
とりあえず、ファイナルが飛んでいなくて送信できるだけでも良かったです。(終端型電力計で測定)
症状は、「1200MHzの送受信時に”ボゴボゴ”、”ガサガサ”と音がする」というもので、マイクのケーブルが接触不良になったような、マイクに虫が入ったような感じでした。送受信共に不具合が発生するということからPLLがおかしくなって、安定してロックできない状態ではないかと判断しました。
なんと、TS-790の取り扱い説明書には回路図がついていました。さすが、アマチュア固定機という感じですが、残念ながらPLL部分の回路図はないようでした。
しかし、幸いなことにTS-790シリーズは海外でもユーザーが多く、インターネットで容易にサービスマニュアルを入手することができました。これで、修理することができます。また、TS-790を修理された方のブログもたくさんあり、とても参考になりました。どうも、1.2GHzモジュールのPLL不良はTS-790の持病のようです。ひどくなるとPLLが全くロックしないようになってしまうようです。もちろん、きちんとロックしない状態では使えないので一緒ですが…
先ずは、1.2GHzモジュールの分解からです。今回はRF系は問題なく動作しているようですので、モジュールの下にあるPLL部分のみを開けました。サービスマニュアルに従い、PLLの電圧を確認します。
1.2GHzのPLLは3つあります。指定の周波数になるようにメインダイヤル(同調つまみ)で合わせ、テスターで各テストポイントの電圧を確認します。B loop VCOは正常範囲でした。A loop VCOは少し電圧がずれていましたが、調整によって合わせる事が可能でした。
C loop VCOは電圧がかなりずれていました。調整できないことはないですが、調整が非常にクリティカルで直ぐにずれます。どうやら、C loopのPLLが不良のようです。
VCOユニットの中にあるトリマコンデンサ TC1の不良も持病のようですので、交換することにしました。6pFのものが使われていますが手持ちには無かったため、まぁMaxで調整することはないだろうと考え 5pFのもので代用しました。結果は無事VCOを調整することができました。
しかし、一度、組み上げてテストしたところ、「ボゴボゴ、ガサガサ」音は無くなったものの、何かすっきりとせずに送受信ともノイズっぽい感じでした。もう一度分解です。
PLL IC5の不良もTS-790の1.2GHzユニットの持病のようですが、PLLは(ほぼ)ロックしているのでIC5は壊れていないと考えられます。PLLのループフィルタの不良か、VCOの電源のノイズが影響しているように思われます。1980~2000年手前の電気製品の故障で先ず疑うのは、電解コンデンサの液漏れと容量抜けです。C122,C126は、23Vラインに25V耐圧のコンデンサが選択されています。もう少し耐圧マージンがあった方が良いので50V耐圧のコンデンサに交換しました。C128,C129は100uFが並列で使用されています。おそらく、電解コンデンサのESRを下げたかったのでしょう。手持ちの導電性高分子コンデンサ(OSコン)に置き換えました。OSコンは低インピーダンスの電源ラインに使用する場合は注意が必要ですが、L31やR103が入っているので、短絡モードで壊れても被害は少ないだろうと考えました。また、電解コンデンサは寿命がある部品なので、ケースを開けたついでに他の電解コンデンサも全部交換することにしました。(といっても、1.2GHzのIFユニット内だけですが)
全部の電解コンデンサを交換し確認したところ、あのノイズはすっかり消えて、クリアな変調と受信音になりました。また、送信周波数が少しずれていたので、基準周波数のTCXOの発振周波数も調整しました。
不動覚悟で購入した無線機ですが、無事修理でき動作するとやはり嬉しいものです。海外でもシリーズ機種のユーザーが多いためかサービスマニュアルを入手できたのが大きいです。
この無線機は、アマチュア無線全盛期のもので、今でも高級感があります。
特に、KENWOOD製なので今でもカッコいいです。
チューニングダイヤルが、ボタン一つでクリックとスムースに切り替えられるギミックもなかなかです。傷もほとんど目立たず、ぼーっと見ているだけでも気分が良いです。良い買い物をしました。
問題なく動作するようになりましたので、さっそくJARDに保証認定を申請しました。
早く使えるようになるといいな。
残りのメンテナンスはボチボチやっていくつもりです。