先日、液晶ディスプレイを修理したFT-897は、UHF(430MHz)の受信感度が悪くなっていました。
SGでざっと見て20dBぐらいの感度低下でしょうか。最初は、初段FET Q1025 2SK2685ZTの劣化かと考えましたが、J1003から直接SGの信号を入れて確かめると感度はそんなに悪くはなさそうでした。

そうなると、アンテナ入力から受信回路までのどこかで劣化していることになります。

やはり怪しいのは、アンテナ切り替え回路です。
PINダイオードは、順方向電流によって抵抗値が可変するダイオードです。
送信時、PINダイオードD3015,D3021がONになり送信電波を通過させます。一方受信回路へは、PINダイオードD3022,D3066,D3024がONになり、受信回路(U RX(RX) )に入る送信電波を減衰させ、受信回路を保護します。
受信時は、D1015,D3021がOFFになり送信回路から切り離され、また、D3022,D3066,D3024もOFFになるため、受信電波は(ほぼ)減衰することなく、U RX(RF)に通過します。
受信状態ではD3022の両端は高抵抗になるはずですが、ほぼショートでした。VFも測定できませんでした。これでは、受信感度が下がっても仕方ないですね。
D3022,D3066,D3024に使用されているPINダイオードは日立(今はルネサス)のHSU277です。
D3022,D3066は並列、D3024もL3041を通っているものの、ほぼ並列ですから抵抗値だけで、どのダイオードが壊れているかを判断するのは難しいです。また、D3022,D3066は並列なので2つとも同じロットのPINダイオードに交換するのが良さそうです。
基板のA面(表面)にあるD3022,D3066は簡単に取り外せましたが、故障していたのは、このPINダイオードではありませんでした。コンデンサC3148,C3173がショートしている可能性もありますが、経験からおそらくはD3024の故障です。D3024はB面(裏面)にあり、ボンドで接着されているので取り外し時に壊れてしまいました… 結局全てのPINダイオードを外しショートが改善されたことを確認しました。
PINダイオードを3個とも交換後、SGで430MHzの受信感度を確認すると改善されていました。まだ、微妙に感度が低下している感じはしますが、実用上は問題ないでしょう。
このFT-897は、基板を改造された箇所があるので、初期ロットに近いもののようです。メーカーで製造時に改造/改造された部品は、他の箇所と接触しないようにチューブが被されていたり、シリコンボンドで固定されています。このような改造部品もその内に基板に反映されます。
FT-897は2002年に発売され2014年に製造終了となるまで12年間も生産された機種のため、途中で何度か基板変更や部品変更があったようです。2010年に発行されたサービスマニュアルには、改定された基板図と回路図が掲載されています。